映画で学ぶ〈世界史〉Ⅰ


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担当講師:松屋直子

開講期間:1学期 1/19(日)~ 3/28(土)

カリキュラム
第1回  映画『ARGO』
第2回  未定
第3回  未定
第4回  未定
第5回  未定

内容
映画を観るだけで勉強ができたらなんて楽なんだろう。そんなの甘い考えかもしれません。でも、きっと何かは学べるはず。そんな期待もやっぱりあります。
この講座では、映画は好きだけど世界史は素人の山﨑が毎回、映画作品を1つ選び、世界史の専門家である松屋先生に「この映画って世界史マスターから観たら、どう見えるんですか?」というような(なんとも乱暴な)質問をさせていただきます。ここまでが1回の前半です。後半では松屋先生にそれに答えていただきながら解説をしていただいて、受講生とともに「世界史的な視点」を獲得していこうというものです。

担当講師から 
 こんにちは、松屋直子です。
 言うまでもなく、ほとんどの映画は何の解説もなく楽しめるようにできています。たとえ歴史が題材の映画であっても、歴史的背景が多少わからなくても、十分に楽しめるのがすぐれた映画というものです。
 しかしこの講座ではあえて、映画が描いている歴史に踏み込んでいくことを目的とします。時代背景を詳しく知ること。監督の意図を想像すること。描かれていないものに気づくこと。それによって、映画がまた違った顔を見せるようになるのです。
 すぐれた映画は、その迫真性によって、そこで描かれていることが無条件に真実であるように錯覚しがちです。純粋に楽しさを求めて鑑賞する際には、それがいちばん正しい映画の見方でしょう。それは当然、歴史映画にも当てはまります。いま・ここにある現代の世界でさえその全体を映像に映し出すことは不可能です。ましてそれが過去となれば、わずか2、3時間の枠の中で表現できるのは、恣意的に取捨選択されたごく一部の側面に限られてしまうのは避けようがありません。
 たとえば、歴史を描いた作品の一つに宮崎駿監督の『風立ちぬ』があります。ヒロインの名前が私と同じ、なのはさておき、主人公の堀越二郎は第二次世界大戦で活躍(?)した戦闘機「零戦」の開発に携わった実在の技術者・堀越二郎と、小説家の堀辰雄がオーバーラップする人物です。日本の映画界では珍しく、宮崎駿は公に政治的発言を行うことで知られており、彼は明確に戦争を否定しています。しかしながら『風立ちぬ』の注目すべき点は、零戦を開発した堀越二郎も、その仲間の技術者たちも、そして零戦そのものも、「悪」というレッテルを一切貼ることなく、それどころかむしろ彼らの才能や感性、そして最終的には言語に絶する惨劇をもたらすその航空機さえ、それらの美しさをたたえるように表現しているところです。技術者にも、彼らが開発した飛行機にも罪はなかった。むしろそれらはきわめて美しくさえあった。この事実が、その描写が、相対的に(この映画では直接描かれていない)戦争のむごさを際立たせます。
 さて、もし第二次世界大戦の残酷さを知らなかったら、零戦が何をもたらしたのかを知らなかったら、その観客はこの映画をどう観るでしょうか。たとえば公開当時(2013年)小学生だった観客は、この映画をどのように観たのでしょうか。もちろん答えは冒頭に書いたとおり。たとえ歴史を知らなくても、十分に鑑賞を楽しんだに違いありません。なにせスタジオジブリの作品なのですから。しかし、もし仮に、その小学生が、親であるあなたに向かって、劇場内で、大声でこう言ったら?―あの零戦ってすごくかっこいいね! 僕もあんなの作りたい!……
 この講座は、継学館の山﨑謙介先生とのコラボレーションです。山﨑先生から質問を頂戴し、松屋がそれに答えます。問題とは、それが問題として表明された時点で9割は解決されている、とよく言います。つまり、難しいのは問題を問題として認識し、形にすることなのです。その肝腎な部分は山﨑先生にお任せし、私はそれに対する答えを考え、調べ、語るだけです。 この講座を通じて、皆さんの映画体験がより意義深いものになったらこれ以上の喜びはありません。